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仮想通貨の証拠金倍率の引き下げ提案

仮想通貨取引4倍以内に 業界団体、証拠金の自主規制案

このニュース、あまり注目されていないようですが、結構重要な話だと思います。現在の日本におけるビットコイン市場では、証拠金倍率最大15倍のbitFlyerFXに取引が集中し、そのシェアは9割に達しています

ビットコインの取引金額における日本のシェアが50-60%に達するという話をよく聞きますが、その実態は、この証拠金取引の膨張によるものです。仮想通貨取引には、基本的に個人投資家しか参加せず、金融機関や機関投資家などの本当のプロは参加していません。世界シェアの半分を占める取引をしているのは、セミプロともいうべき日本の個人大口投資家なのです。

仮想通貨市場は、株式や債券といった一般の金融市場とは性質が大きく異なります。本源的価値がないとされる仮想通貨が、世界的な金融緩和とICOブームなどの影響で大きく値上がりし、セミプロの個人投資家が個人とは思えないような大きな金額で売買を行っているのです。

株式や債券にも、似たような仕組みはありますが、基本的には、そうした有価証券への投資は、発行体企業を経由して社会に還元され、経済成長を生み出す重要な役割を担っています。それに対し、仮想通貨にはそうしたルートは存在しません。価格変動が大きいので、純粋な投資対象としては儲けるチャンスが大きく、同時に損をするリスクも高くなります。そうした取引が拡大し、仮想通貨のエコシステムが育つことで、素晴らしいイノベーションが生まれるのか、というと、残念ながら、現状ではそれは実現していないように思います。

こうした事情を考えれば、仮想通貨の証拠金倍率への自主規制導入は、金融取引における同種の議論とはやや性質が異なるもののように思います。宝くじの当選金が高すぎると、射幸心をあおる、という趣旨の規制があります。各種公営ギャンブルの制度設計でも同じことが言われます。人によっては「大きなお世話だ」と感じるかもしれませんが、(国内では)個人投資家だけの市場であることを考えると、あまりに大きなレバレッジが取れてしまうことは、投資家保護、消費者保護の視点から、望ましくないという議論があり得るでしょう。消費者、個人投資家は、弱者であり、保護すべきものと考えられているからです。

こうした自主規制を導入することで、取引が国内の業者から、規制のない海外の業者に流れてしまう、ということがよく言われます。最近は、動画を含め、海外の仮想通貨交換業者における口座開設を懇切丁寧に説明してくれるサイトが増えています。もちろん、アフィリエイト狙いなのですが、ネットが国境を越える取引を可能にした訳で、それを完全に防ぐことは難しいし、その必要でもないでしょう。ネットを介して海外の業者にアクセスして取引する投資家は、国内の業界や規制当局の保護を必要としていないことを表明したということだと思います。そうしたある種リバタリアン的な行動が可能になったことは、ビットコインの成し遂げたひとつの成果なのかもしれませんが。

もう一つ、この議論は、日本仮想通貨交換業協会が自主規制団体として機能し得るかの試金石になるだろう、という点も見逃せません。経過措置の扱いを含めて、どのように合意形成がなされていくのか、今後の成り行きに注目したいと思います。