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2014年に書かれたビットコインの将来についての予言

今を去る5年も前に書かれた「Bitcoinは計算量理論から見て「無限連鎖講」である」(安岡 孝一京都大学准教授)の記事をたまたま読む機会があった。内容は今読めば同意できる点が多いが、この原稿が掲載されてからしばらくは、ビットコインの価格が高騰したので、「外れた予言」扱いをされていたのではないかと気の毒に思う。

今読んで違和感があるとすれば、ビットコインのマイニングへの参入と退出に障壁がないという前提で書かれている点だ。2014年ころは、まだ個人のCPUでマイニングするのが普通だったから、ビットコインに対する期待が高まれば投入される計算量が増え、期待が落ちれば計算量が減る、という前提で議論できた。

まさにこの頃、ジハン・ウーがBitmain社を立ち上げ、ASICマイニングを始めた。その後の計算量の伸びはまさに発散型で、期待の高まりと難易度の難化が計算量を増加させるプロセスに入った。素人がCPUを持ち寄ってもビットコインはマイニングできなくなり、マイナーは巨大な装置産業と化した。とりわけ、2017年の相場高騰の前後に行われた異常な設備投資が、世界のシリコンサイクルを歪め、大手半導体メーカーの経営にまで影響する事態となった。そして、2018年、マイニングは実にオーストリア一国に相当する電力を浪費する産業となった。

ビットコインの採掘難易度の推移(https://www.blockchain.com/charts/difficulty)

2018年に入ってから、上がりすぎたビットコインの価格が暴落する中で、しかしマイニング能力は上がり続けた。マイナーの多くは相場のリバウンドを期待していただろうし、既に発注してしまった設備機器もあっただろう。最大手のBitmain社は香港で10億ドルの資金調達を計画していたとも伝えられている。

こうした状況は、安岡理論の前提が少し崩れていることを反映している。マイニング装置は高速にハッシュ関数を計算することだけに特化した機器だから、いったん投資してしまったものは簡単には止められない。参入と退出がスムーズに行われるという仮定は崩れ、相場が多少弱気化しても計算量は拡大を続けた。一部のマイニング装置が稼働を停止し、計算量が減少して難易度が容易化し始めたのは、2018年の10月以降であり、2018年11月の相場下落がその変化を決定づけた。

とはいえ、参入・退出が粘着的であることは、計算量の調整が今後もタイムリーには行われないことを意味している。このため、相場が崩れても一気に計算量がゼロになるというシナリオは、今のところ実現しなさそうだ。ほかにも、2017年にビットコイン以上に急騰したアルトコインの動きや、ICOなど、新しい不確定要素が入ってきているから、モデルの解釈に若干の修正を加える必要があるかもしれない。

そうはいっても、基本的には安岡理論の見立ては正しいだろう。正のフィードバックがある限り、計算量のグラフが描く軌跡は発散せざるを得ないが、地球は有限だから、無限にマイニング能力を増やすことはできない。本当は、関係者がもっと早くそれに気づくことができれば良かったのにと思う。