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ビットコインを買っているのは誰なのか

ビットコインを始めとする暗号資産の取引データや相場データは、様々な機関が取引所から収集、集計し、様々な形態で公開されている。私が普段から参照しているのは、coinmarket.comというサイトの相場および取引金額情報で、これらは全世界の暗号資産交換業者がAPIで提供するデータを集計したものだ。

このグラフは coinmarket.com によるBTCの相場及び取引金額(グラフ下部の棒グラフ)だが、取引金額には2回のピークがあることがわかる。2017年末のBTC高騰時と、2019年入り後の再高騰時である。相場は2017年に20000ドルまで行ったのに比べ、2019年は10000ドルを若干上回った程度で膠着している。しかし、取引金額は、2017年よりも、2019年の方が遥かに巨額である。

これに対し、coin.danceというサイトが提供している取引金額データは、かなり異なる形状を示す。こちらは、暗号資産間(例えば、BTC⇔Tether)の取引を除き、各国の取引所で法定通貨と交換されるローカル取引の金額を集計したものである(時系列はどちらも2013年~直近時点)。こちらのグラフは、coinmarket.com のものとは異なり、増え方はなだからであり、2017年のブームをピークに、最近のローカル取引金額は横ばいである。

coin.dance の 2019年の取引が、2017年を上回ってはいないことから、 coinmarket.com の取引量データが特殊なのではないかとの疑念を呼ぶ。実際、最近の暗号資産市場では、「クジラ」と呼ばれる特殊な取引主体が、暗号資産市場内でのキャッチボールを繰り返して相場を吊り上げているとの指摘が絶えない。マーケット全体のマネーフローを描いた図を見ても、BTC⇔Tether や ETH⇔Tether、 BTC⇔ETHの取引が中心であり、法定通貨との交換は取引のごく一部であることがわかる。

coinlib.ioによるマネーフロー図(2019.8.4日分)

常々書いているように、この暗号資産間のキャッチボールが、Tetherの増発などを利用した相場操縦に類するものだとすれば、通常の取引参加者の行動をより正確に表しているのは、coin.danceのローカル取引の金額データであるように思える。

この coin.danceデータは、取引される法定通貨毎に、どの国のローカル取引が活発であるかを知る上でも有用である。もちろん、こうしたデータは、全て交換業者の自己申告によるものであり、その正確性に疑念がないわけではないから、真贋を慎重に見極める必要があるが、最近、特にラテンアメリカ諸国で変わった傾向が観察されるので、 そこに着目してみたい。

ラテンアメリカ諸国におけるビットコインのローカル取引金額を並べたのが以下のグラフ群であるが(時系列はいずれもほぼ上記全体データと同一)、2017年の以降、取引の増加が続き、2019年に取引量がピークとなっていることが目立つ。左上から、アルゼンチン、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、ベネズエラである。ただし、これらのグラフは縦軸に各国通貨を採用しているため、通貨価値が下落した場合、取引金額が上振れする傾向がある。特にベネズエラについては、縦軸がボリバルであり、近年のハイパーインフレにより通貨価値が激減しているので、このグラフだけでは、米ドルなどで測った取引金額がどう推移しているのかは分からない。

ベネズエラについては、2018年の時点で、ハイパーインフレにより自国通貨が無価値になり、暗号資産が法定通貨にとってかわった、という情報が流れていた。さらに最近の情報では、電力供給と通信インフラの不安定化により、暗号資産すら利用できなくなったことから、BTC単位でみれば、取引金額は急減しているとのことである。

ベネズエラは特殊な事例だが、それ以外のラテンアメリカにおけるビットコイン人気は、それらの国で法定通貨の代わりにビットコインが決済手段として利用されているということではないようだ。むしろ、自国通貨の価値が下落し、インフレとなる懸念を抱いている投資家が、資産の逃避先としてビットコインを選んだということのようだ。韓国、カザフスタン(下の2つのグラフ)なども、似たような傾向を持っている。

これに対して、いわゆる先進国では、日本、欧州、北米とも、最近の暗号資産の相場上昇の影響をあまり受けておらず、取引の傾向はあまり変わっていない。自国通貨に対する信頼が高ければ、あえてボラティリティの高いビットコインで資産を持つ必要性はない。投機で儲けようとする人が保有する量は、少なくとも2017年の大相場の頃と比べれば少ないということだろう(下のグラフは、左上から、ユーロエリア、日本、英国、米国)。

自国通貨安の不安からビットコインに資産を逃避させているラテンアメリカ諸国の投資家の思惑が当たるか外れるか。今後のBTC相場を観察する際には、色々な立場の人がいることを意識しながら見ていく必要があるだろう。