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ビットコイン投資家が巨額の信用リスクを負う謎

ついにというか、coinmarketcap.comの暗号資産の流通残高ランキングでTetherが3位に浮上した。最近、73億ドルから88億ドルへと15億ドルの増発を行い、他の暗号資産がちょっと値下がりしたので、XRPを抜いて3位となったのだ。ビットコイン、イーサリアム、Tetherという順位は、ちょっと異様な印象を受ける。

今や、Tetherに限らず、ステーブルコインは発行したい放題で、米ドルにリンクするステーブルコインだけで、発行額の多い順に、Tether、USD Coin、Paxos Standard、Binance USD、TrueUSD、HUSD、Multi-collateral DAI と、7種類が100位以内にランクインしており、その総額は100億ドルを超える。

当局からの規制も受けず、十分な開示もないステーブルコインを、発行体の言い分を信じて保有するということは、発行体の信用リスクを負うということに他ならない。ステーブルコインを保有するビットコインの投資家がその辺をどう考えているのかはよく分からない。そもそも暗号資産の取引では交換業者だけは信用するというのが通例だから、交換業者の信用リスクとかは恐れないということなのだろう。

ビットコインの当初の理念は、誰も信用できない状態でもオンラインで価値のやり取りをできるようにしようというものであった。だから、非中央集権とかトラストレスといったビットコイン特有の価値観ができたのである。その考え方を信奉している人が、会ったこともない交換業者だけは信頼するというのも誠に不思議な謎だと思う。まあ、ビットコインを売買している人が全てその理念を信じているという訳でもないのだろうけど、では一体なぜそれに価値があると思うのだろうか。

こうした不思議な構造が一般社会にも染み出して、信用リスクに対する認識が鈍ってくると困ったことになりそうだ。最近は人々をリスク不感症にしてでも投資を喚起しようという風潮が幅を利かしている。暗号資産の世界で起きていることは、リアルな経済の映し鏡なのかもしれない。