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ナゾと推論1 日銀支店長という仕事

 日銀下関支店長 岩下直行

「支店長って、どんな仕事をしているんですか」と時々尋ねられる。実際には色々な雑事に追われているのだけれど、ちょっとだけ格好をつけて「探偵みたいな仕事ですよ」と答えるようにしている。山口県経済の動向を調査するという仕事は、推理小説に出てくる私立探偵の仕事に共通するものがあると思うからだ。ちょっと違うのは、シャーロック・ホームズなら自宅でパイプをくゆらせていれば謎の事件のほうが飛び込んでくるのに対し、こちらは自分で「謎」を探さなければならないということだ。

県内の様々な企業を訪ねて経営者の方からお話を伺い、国や県の機関が発表する統計数値を眺め、企業にアンケート調査を実施して景気動向や企業行動を分析していると、集めた情報の中に、一体これはなぜだろう、と不思議に感じられるものが時々混じっている。そうやって見つけた「謎」を、自分なりの仮説を立てて推理するのが支店長の大事な仕事である。こうした謎解きについて、支店のスタッフにきちんと裏付け調査をしてもらい、その結果を、日銀下関支店の「山口県金融・経済レポート」として発表してきた。

例えば、山口県を代表する味覚、トラフグの取引価格はどう決まるのか。ここ数年、日銀下関支店に還流するお札の量が大幅に減っているのはなぜか。県内企業へのアンケートから算出される景況感や設備投資の伸びが、調査機関によって大きく異なるのはなぜか。こうした謎解きは、山口県経済をより深く理解するために有用であるし、景気の先行きを読む上でも重要な視点を提供してくれる。

謎を解くといえば、こうした経済問題ばかりではない。当地の新参者である私には、毎日歩いて通勤している下関の古い街並みや地名の由緒由来に興味がかきたてられる。地元の人々に尋ねたり、支店の蔵書を読んだり、インターネットを検索したりして、そうした謎にも自分なりの答えを見つけ、そこで得た答えを講演の場で地元の方々にお話ししている。これもまた、支店長の大切な仕事である。

講演や寄稿で謎解きをご説明していると、色々な感想やコメントを頂く。時にはこちらの勘違いを指摘して下さったり、追加の情報を寄せて頂いたりすることもある。おかげで私も誤りを正し、更に理解を深めることができる。そういう意味でも、多くの人々と情報を共有していくことは大切だと思う。

今回、連続エッセイを書かせていただくこととなりました。このコーナーでは、私がこれまで取り組んできた様々な謎解きや、講演でお話してきた話題などを皆様にご紹介させて頂ければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

(2010.9.22日 山口新聞掲載)

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