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ナゾと推論8 三日月の欠けかた

 日銀下関支店長 岩下直行

今日の夕暮れ時、もし晴れていたら西の空を見てほしい。三日月が見えるはずだ。三日月は新月から三日目、つまり陰暦三日ごろに見える月である。だから三日月と呼ばれる。何のナゾもない。 だが、はたしてそうだろうか。試しに、今日の月を見る前に、その姿を思い描いて、次の問いに答えて欲しい。

【問題】三日月は、右と左、どちらが欠けているか。つまり、⊂型と⊃型のどちらの形か。

【答え】三日月は、(北半球の中緯度地方では)必ず左側が欠けている。つまり、⊃型をしている。

月は、新月の後、右側から太り始め、満月の後、右側から欠け始める。つまり、⊃→〇→⊂と変化する。だから、陰暦三日ごろの月は必ず⊃型をしている。これに対し、⊂型は新月の直前に現れる形だ。理科の授業では、この⊂型の月を「二十七日月」ということがある。陰暦二十七日ごろに見える月だからである。

したがって、夜空に「三日月型」の月が見えた場合、それは三日月か二十七日月のどちらかだ。そのどちらであるかは、月の欠けかたを見れば分かる。とはいえ、冒頭の【問題】に、すぐには答えられない人も多いだろう。そういう人はどうしたらよいだろうか。

安心してほしい。普通の生活パターンで暮らしている人が実際に夜空で目にする「三日月型の月」は、通常は陰暦三日頃の月なのだ。だから、「三日月型」の月が浮かんでいるのを見たら、それを三日月と呼んでほぼ間違いない。

その理由は、月が見える時間にある。陰暦三日の月は、日暮れ時に西の空に輝く。夕方、家路を急ぐ時に、低い空に三日月を見たことのある人は多いだろう。これに対し、陰暦二十七日の月は、夜明け前に東の空に輝く。特別に早起きの人を除けば、二十七日月を見る人は少ない。だから、普通の生活パターンで暮らしている人が、空に「三日月型の月」を見かけたとしたら、それはほとんどの場合、⊃型をした陰暦三日ごろの月、つまり三日月なのだ。時間は夕方から宵の口、月は西の空に出ているはずである。

ただし、南半球に旅行に行くと、月の形も変わって見える。もちろん、北半球と同じ月を見るのだが、太陽や月が空に描く軌道が違うので、上下の向きが逆さまに見えるのだ。だから、南半球の中緯度地方で見える三日月は、右側が欠けた、⊂型をしているのである。

(2010.11.10日 山口新聞掲載)

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