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ナゾと推論13 日銀短観

 日銀下関支店長 岩下直行

日銀下関支店として山口県経済の景気動向を分析する際に、われわれが最も頼りにしているのは、日銀短観と呼ばれる地元企業へのアンケート調査である。調査表を企業にお送りし、売上高や利益などの計数を教えていただくとともに、各社の「業況判断」を尋ねる。つまり、会社の景気が良いか悪いかを回答してもらうのだ。これを集計したものが、日銀短観DIである。この短観の作成において、われわれが特に注意しているのは、その連続性である。

例えば、マスコミの世論調査では、ランダムに調査先を決定し、アンケートの回収率が低くても、回収できたものだけを分析するというアプローチが一般的である。しかし、売り上げや利益、業況判断といった項目を継続的に聴取する短観の場合、もしも回収率が低く、回答先が毎回大きく異なると、統計値に信頼が置けなくなってしまう。業況判断であれ、売り上げや収益の計数であれ、回答先が固定していないと分析がしにくい。実勢が変化したのか、単なるサンプルのゆらぎなのか、見分けが付かないからである。

このため、われわれは、個別にアンケート協力先企業と連絡を取り合い、同じ企業から継続して回答にご協力をいただくようお願いしている。アンケートの回収率が毎回ほぼ100%なのはこのためだ。

同じ先から継続して回答を頂けるようにするためには、対象企業をある程度限定しなければならない。現在、日銀短観に協力していただいている山口県内の企業は167社で、現在の調査方式を考えればこの数をあまり増やすことはできない。

一方、県内経済の実勢をより正確に捕捉するためには、調査先の数を増やしたほうが良いという考え方もある。例えば、山口県内でも民間の研究所が実施するアンケート調査の中には、回収率はあまり高くないが、調査依頼先の数が多いため、日銀短観よりもかなり多い企業から回答を集めている調査もある。また、調査先を企業に限定せず、景気の動きに敏感なタクシーの運転手などの声を聞いた方が良いという考え方で進められている調査もある。

いずれも一長一短なのだが、そのような調査方針の違いがあることを理解して利用するのであれば、多様な調査があった方が県内経済の実勢を捉える上では有用だろう。いずれかの手法で見逃している現象を、別の手法なら捉えられるかもしれない。われわれが毎月の景気分析を行う際に、日銀短観だけではなく、県内で行われている多くのアンケート調査についても幅広く目配りし、判断材料としているのはこのためだ。

本日、12月の日銀短観が発表される。山口県内の企業167社がどのような業況判断を下すか、ご注目いただきたい。

(2010.12.15日 山口新聞掲載)

―PDF版は、こちらをご覧下さい。