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ナゾと推論18 山口県の端点

 日銀下関支店長 岩下直行

のっけから他県の話で恐縮だが、静岡県の最南端がどこにあるか考えてみてほしい。地図を頭に描くと、伊豆半島の先端、吉田松陰先生が密航を企てた下田の辺りが最南端のように思える。しかし、伊豆半島から駿河湾を渡った西側、静岡市の南に延びる御前崎の方が、伊豆半島よりも南にある。誤解を避けるためだろうか、御前崎の突端には、「静岡県最南端の地」の碑が建っている。ひとつの県の中で南端だ東端だと言っても仕方ない気もするが、そうした「端点」を訪れると、何がしかその地域を理解したような気になるから不思議だ。

これに対し、山口県の東西南北の端点が話題になることはあまりない。比較的有名なのは、本州最西端の地、下関市吉母の毘沙ノ鼻であろう。実際にここを訪れてみると、ゴミ処分場の隣に展望台があるだけで、土産物屋のひとつもない。国道から分かれた細い道のずっと奥にあるので、観光開発するわけにもいかないのだろうが、ちょっともったいない感じがする。ただし、ここは本州最西端であって、離島まで含めた山口県最西端はもっと先にある。それは、毘沙ノ鼻の西側に浮かぶ蓋井島である。38世帯、106人が住む。島の東側は絶壁が続くため、本州側からは人工物がほとんど見えないが、島の西側は平坦で、港や小学校がある。

山口県の東端は、本州に限れば岩国市である。沖合拡張された米軍基地の防波堤が東端の地にあたる。離島まで含めると、周防大島町の諸島という無人島が県最東端だ。その手前に有人島の情島があり、68世帯、104人が住む。この辺りは周防大島から愛媛県松山市まで続く飛び石のような列島の一角で、数百メートルの狭い海峡に、山口・愛媛の県境が引かれている。

山口県の南端は、本州に限れば上関町室津である。南端の地とおぼしき室津半島南岸の海岸線には、特に名前は付いていない。離島まで含めると、上関町の八島が県最南端になる。上関町の離島としては、祝島が有名だが、もうひとつの離島である八島には、38世帯、54人が住む。

山口県の北端は、本州に限れば萩市江崎地区、島根県との県境にある鈩崎(たたらざき)である。この北端の地は断崖絶壁で、陸からのアプローチは難しい。離島まで含めると、日本海に浮かぶ萩市の見島が県最北端になる。500世帯、千人余りが住む、橋で本土と繋がっていない離島としては、県内最大の人口を持つ島だ。付近の海でとれる大きなアワビやサザエは有名で、和牛「見島牛」の産地としても名高い。

山口県の端点は、離島など訪問することが難しい場所が多いが、できれば機会をみつけて訪れてみたいと思う。

(2010.1.19日 山口新聞掲載 一部訂正<詳細は第19回参照>)

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