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ナゾと推論19 酔芙蓉が切られた理由

 日銀下関支店長 岩下直行

先週のこの欄で、山口県の東西南北の端点についてご紹介した際に、本州における山口県の北端の地、鈩崎(たたらざき)を、萩市「須佐地区」にあると書いたところ、読者の方から「須佐地区ではなく、田万川地区(江崎地区)ではないか」とのご指摘を頂いた。あわてて調べなおしたところ、ご指摘の通り、鈩崎があるのは旧田万川町の江崎地区であった。お詫びして訂正させていただきます。

当県に赴任して1年半の新参者にとって、地元の歴史や地名に言及するたびに、ちょっとだけ背筋が寒い思いをする。注意深く情報源をチェックしているつもりでも、時々不正確なことを書いたり話したりしてしまうことがあるからだ。こうしてご指摘をいただき、誤りを正すことができるのは、大変ありがたいことと思う。

連載なのでこうして訂正もできるが、一回限りの講演の場合は、後から気付いても訂正のしようがないことが多い。そんな失敗の中で、私が特に気になっていることを書いておきたい。

一昨年の夏に、地元の集まりで講演を依頼され、毎朝の通勤路で見かける花のことをお話しすることにした。下関市の歩道に設けられた花壇では、近所の方々が丹精して、様々な美しい草花を育てている。その写真をお見せしながら、どんな花が咲いているか紹介するという趣向だ。中でも私が特に気に入っていたのは、観音崎町の中通りに植えられている酔芙蓉(すいふよう)であった。

酔芙蓉というのはフヨウの花の一種で、朝方、白い花をつける。その花は、昼ごろにはピンク色に変わり、夕方には紅色に変わって花がしぼむ。その様子が、人間がお酒に酔って顔が赤くなるのに似ているとして、その名がついた。前の日に咲いてしぼんだ紅い花が翌朝も残っているので、まるで1本の枝から紅白2種類の花が咲いているように見える。私は毎朝、観音崎町を通るたびに、たくさんの花をつけるその酔芙蓉を楽しみに眺めていた。

ところが、夏の終わりのある日、その酔芙蓉は根元からばっさりと切られ、影も形もなくなっていた。車道にはみ出すほどに大きな株になっていたので、邪魔だと思われたのだろうか。そう早合点した私は、直後の講演で、「残念なことに、この酔芙蓉は伐採されてしまったため、もう見られません」と説明してしまった。

ところが、その後しばらくして、切られた根元から新しい芽が生え始めた。そして、翌年の夏には、前年と変わらない立派な株となって、再び美しい花を咲かせたのだ。実は、この酔芙蓉は、枝をリフレッシュするために根元から剪定されただけだったのである。

早合点で、花壇の世話をされている方をとがめるような説明をしてしまったことを申し訳なく思う。この時の説明についても、お詫びして訂正させて頂きます。

(2011.1.26日 山口新聞掲載)

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