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シルクロード事件とは何だったのか

The Rise and Fall of Silk Road

あの「Silk Road」事件に取材したノンフィクションで、あたかも宮部みゆきの「火車」のようなドキドキする展開のストーリーになっています。wired誌に2015年に掲載され、大きな注目を集めたものの翻訳で、当時も読んでいたものの、再読して色々と考えることがありました。

ひとつは、PC、インターネット、ビットコインと進化してきたITの根底にあるリバタリアン的な発想が、Silk Roadのようなアンダーグラウンドの拡大を生み出したということです。私は、最近のICOブームやベネズエラのPetro発行、あるいはNEM盗難事件におけるマネロンの手法などに、同じような匂いを感じます。

翻訳の第2回にある「Silk Roadはある意味では、インターネットを活性化させてきたリバタリアン的価値観の論理的帰結だった」という辺りの記述、DPRことロスの人生観や倫理観の変化の様子が、そうした思いをより明瞭にしてくれると思います。

もうひとつは、初読当時はあまり気にしていなかったのですが、FBIがSilk Roadの資産を差し押さえた手法です。最終回の次の記述が生々しいです。

「ヨムはトール・データセンターにあるマシンと世界中のほかのマシンとの通信を切断し、デジタルポインターをリダイレクトすることで、ビットコインの所有者をSilk RoadからFBIアカウントに変更した。」

ヨムはFBI捜査官、トール・データセンターはアイスランドにあるSilk Roadの利用していた拠点です。しかし、「デジタルポインターをリダイレクト」するだけで、ビットコインの所有者を変更するのは実際には無理なはずで、逮捕されたSilk Roadの管理者の利用していた秘密鍵を使ってビットコインをSilk RoadからFBIアカウントに送金したのだと考えられます。だから、「ノートPCを開いたままの状態で逮捕する」ことにFBIはこだわったのでしょう。

この犯罪捜査の前のタイミングから、FBIは自分の管理するビットコインのアカウントを持ち、そこに送金することで差し押さえができるような体制となっていたと考えられます。2013年当時はまだ、取引所で購入したビットコインを取引所に預けっぱなしにしておくのが常識となる前の時代ですから、FBIも直接ノードを立てて、ビットコインのアカウントを管理していたのだと思います。今の日本で同じことをするのは、なかなか難しいかもしれませんね。

この日本語訳はしっかり訳されているのですが、画像が静止画になってしまっているのが残念です。日本語訳の後半では、画像が掲載すらされていないかも。ぜひ、英語版の前編・後編をみていただき、Tomer Hanukaによる挿絵が動くところを確認していただければと思います。私は逮捕の瞬間を描いた挿絵が好きですね。

WIRED.JP
The Rise and Fall of Silk Road|シリーズ(連載)/SERIES|WIRED.jp
ジャンベとサーフィンをこよなく愛する青年は、いかにして「Silk Road」という巨大地下帝国を築き上げ、そして堕ちたのか。米国サイバー犯罪史上、最も大がかりな捜査の果てに、ダークウェブとビットコインの存在を満天…