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ナゾと推論38 犬が道案内をする島Ⅱ

 日銀下関支店長 岩下直行

先週の本欄で、六連島(むつれじま)で出会った白い犬のことを書いたところ、下関市内に住む女性から、次のようなお手紙をいただいた。

「6月8日水曜日の山口新聞に掲載された記事を拝見しました。今回、実家の犬が記事にされていたのでびっくりしましたが、とても嬉しく思い、突然ながらもお便り致しました。
六連島で出会った犬は“ラブ”という名前の我が家の愛犬です。母親がビーグル、父親が白の雑種の間に生まれ、9年前に知人から頂いた犬です。
島内では放し飼いで、普段は畑について行ったり、我が家の玄関先で日なたぼっこをしたり、丘から海を眺めたりしています。
ラブはとても人なつっこく、時におっちょこちょいな所もありますが、みんなからかわいがられています。人が集まっている船着き場や波止場(魚つり場)は大好きな場所です。
町中では放し飼いは考えられないと思いますが、島ならではで、自由に散歩したり、時には他人のバイクや車に相乗りして山に行き来したりと、犬ということを忘れ、日々満喫しているようです。
今度島で出会った時は“ラブ”と声をかけるときっと喜ぶと思います。ぜひまた島に遊びにお越し下さい。」

オリーブ色の便せん2枚に、丁寧な字でつづられた文面をみていると、あの白い犬“ラブ”が島でいつくしまれて育った情景が目に浮かぶような気がした。はい、また遊びに行きますね、と私は心の中で返事をした。

六連島は、下関の特産品であるアルコール漬け瓶詰めウニの発祥の地としても知られている。島にある西教寺の住職が、島を訪れた外国人の船員と歓談していた際に、盃に注ごうとしたジンが誤ってウニの小鉢にこぼれたが、それを食べてみたら意外にも美味だった。この話を聞いた島のウニ業者城戸久七(きどきゅうしち)が、試作を重ねて完成させたのが、アルコール漬け粒ウニである。その製法が下関に伝わり、瓶詰めウニとして特産品となった。久七の功績を顕彰する石碑が、西教寺の境内に建てられている。

六連島を訪れたあの日、ラブと一緒にこの石碑を探した。島の道は入り組んでいて、西教寺の狭い入口がなかなか見つけられなかったが、何とか乗船時間までに探し当てることができた。

せっかくなのでラブと一緒に石碑の前で記念撮影をしようとしたのだが、妻がシャッターを押す寸前に、ラブはプイっと石碑の前を離れてしまった。だから、私の手元に残った写真には、石碑の前でポーズする私と、白くて長い犬の尻尾だけが写っている。

(2011.6.15日 山口新聞掲載)

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