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ビットコインの10年目の誕生日

最近は相場が下落してあまり一般の話題にならなくなっていたビットコインですが、折角の10周年なんだからもう少し盛り上がるのかと思っていました。色んな定義がありますが、ナカモトサトシ論文の日付から10月31日がビットコインの誕生日で、最初のブロック(ジェネシスブロック)の生成の記念日が1月3日、ナカモトサトシによるメールによる周知の日付が1月9日です。他にも、最初に使われた(?)のを記念してピザを食べるのが5月22日と、色々ありますね。

他の日付は後で偽造も可能そうなので、技術的には1月3日のジェネシスブロック誕生日が一番確実な感じがします。この日は、”Proof of Keys”イベントの日なんだそうで、こんな記事が載ってました。

Proof of Keys Explained: Bitcoin’s First Planned ‘Bank Run’ Is Today (Alyssa Hertig、Jan 3, 2019 at 19:00 UTC)

関連サイトで述べられている趣旨は全く正論で、「Not your keys; Not your bitcoin.」なのだから、取引所(というかカストディ)に預けてあるビットコインを全額引き出して、自分の秘密鍵で取引してみて、その存在を確かめよう、という運動です。確かに、そうしないと安心できないはずですよね。でも、実際には自分で秘密鍵を管理するのは結構ハードルが高いので、「運動の趣旨に賛同して取引しました」という話はあまり聞きません。Mt.Gox、CoinCheck、Zaifと続けて事件が起きた日本では、話題にもなってなかったと思います。

ということで、記事に書かれたような‘Bank Run’、つまり銀行のとりつけ騒ぎみたいなことは起きなかったわけです。www.blockchain.comで取引件数とかを見ても、1月3日に特異値が出ている感じもしないですし。

もし仮に、本当にそう信じる人が多数となり、毎年1月3日に仮想通貨交換業者(法的にはまだこの名前です)から一斉に個人のウォレットにビットコインが移動するとなると、多分、ブロックチェーンのネットワークが持たないでしょう。日本人だけで、350万人の投資家がいる一方、1日の取引可能件数は30-40万件ですから。でももしスケーラビリティ対応がうまくいって、本当に移動したとすると、それって‘Bank Run’になるんですかね。交換業者にしてみれば、資産と負債が同時に減るものの、窓口に人が押し寄せる訳ではなく、運動の趣旨からいって、また日を置かず戻ってくるなら、何も変わらないということになるのかもしれません。

ただし、交換業者の実務対応としては、一度に大量の取引があることは、あまり想定されていないでしょう。交換業者のホットウォレットで管理している量では足りなくなるかもしれない。出て行って戻ったとして、KYCをどうするの、等々。顧客に「自分の秘密鍵で取引する」ことを実践されることは、交換業者としては避けたいのだろうと思います。

そうだとすると、この記事にある通り、「あなたのビットコインは本当に存在するのですか」という問いが、実は重い意味を持つことになります。私はよく「350万人がgeekにはなれない」と言いますが、そういう趣旨で指摘しているつもりです。