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コンソーシアム型ブロックチェーンは行き詰まるとの論考について

初出は昨年10月とちょっと古いですが、medium.comでこんな論考を知りました。

“Permissioned blockchains are a dead end”
Don’t do it, the combinatorial complexity is going to kill you
Sebastian Wurst

ここでいう「Permissioned blockchain」って、よくコンソーシアム型なんて呼ばれる参加者を限定したブロックチェーンのことです。確かに、現在進められているブロックチェーンのパイロットプロジェクトの多くが コンソーシアム型ですね。オープンなブロックチェーンって、仮想通貨関連ばっかりですから。

この論考のポイントは、そもそもブロックチェーンはデータが参加者間で共有されることが前提だから、参加者が限定されたものであっても、参加者間で秘密にしたいことがあれば、そのデータは載せられないということ。それはそのとおりです。実際のプロジェクトでは、データを暗号化して載せるといった工夫をしているのもありますが、そうすればするほど、何を検証しているのか分からなくなって苦労しているのは事実です。

だから、この論考では、「TezosやEnigmaといったパブリックなブロックチェーンを使うべきだ」というの主張なのですが、私にはいまひとつ、それが正解のようには感じられません。例えば、Enigmaは、結局、ブロックチェーンの外側に機密情報を格納するストレージを設けることでプライバシーと安全性の両立を図るとしています。でも、そもそも企業ユーザーの視点に立てば、機密情報をこういう手続きで外部のオフチェーンのストレージに移転して問題ないと判断することは、かなり難しいと思います。 コンソーシアム型が好まれているのは、参加者が相対的に信頼できることだけではなく、運営者を含めた仕組み全体が信頼できることも関係しているように思うのです。

パブリックなブロックチェーンのプロジェクトは、手っ取り早く資金化を図ろうとして、ICOで資金調達を図った先が多いです。その結果、暗号資産ブームで一時的にMarket Capが極めて高額に達した後、現在は数分の一、数十分の一に減少してしまっているものばかりとなっています。それらの中には、もしかしたら有望なものが含まれているかもしれないのですが、いわば「一旦仕手戦に巻き込まれた企業」のように、何が飛び出してくるか分からないリスクを感じます。企業がIBMなどに頼って、コンソーシアム型ブロックチェーンを重用するのは、そうした事情もあるように思います。

だから、この論者の主張にもかかわらず、今後も企業ユーザーは、パブリック型ではなく、コンソーシアム型ブロックチェーンの開発を続けるのではないかと思います。とはいえ、くれぐれも「コンソーシアム型だから機密管理は大丈夫」とは思ってはいけません。この点については、この論考は正しい主張をしています。だから、また別の手段で問題を解決するか、あるいは、「許可された参加者間では共有してよいデータ」という管理基準を設けて、運用で対応するしかないだろうと思います。