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QuadrigaCX社の問題が一般メディアでも報道され始めた

カナダの暗号資産交換業者QuadrigaCX社を巡る問題は、一週間ほど前から暗号資産メディアでは注目され、私も一通り論評していたが、ようやく一般メディアに掲載され始めた。情報が増えた訳ではなく、日本のマスコミもロイターブルーンバーグに載ったから報道したのだろう。2月5日夜のテレビ東京のニュース番組や、2月6日付の日経新聞報道などが、その嚆矢のようだ。

一般論として、秘密鍵が失われた暗号資産は誰にも移動することができないから、無価値になる。救済することはできない。この問題はビットコインが実装された直後から議論されていたが、サトシ・ナカモトがコミュニティに投稿した文書では「そういった事象は起こり得るが、その場合は他のビットコインの所有者の利益になる」と述べたという。元々、秘密鍵を厳格に管理することが求められており、それを失った場合は自己責任というのが、中央を持たないビットコインの原則であり、それは他のアルトコインにも受け継がれている。

システムについてプロではない一般の個人投資家は、こういう厳しいルールには耐えられないので、暗号資産ごと、交換業者やカストディに預けてしまう。こうすれば、IDとパスワードのような簡単な認証手段で取引できるし、もしパスワードを忘れても、手続きを踏めば資産を失うことはない。こうした、ブロックチェーンに繋がない、交換業者のデータベースを書き換えるだけの取引は、全体の95%を占めるとも言われるけれど、それは資産を預けている交換業者を信頼して預けているのであって、ビットコインの理念である「信頼できる仲介者がなくても取引できる」から、随分と乖離してしまっている。

今回の事件の真相は不明だが、E&Yの報告書によれば、コールドウォレットに資産があると確認できないか、アクセスできないか、あるいはその両方、と伝えられている。経営者といえども突然の事故で亡くなることは常にあるのだから、その死で営業が停止するような個人企業に毛が生えたような業者に、何百億円もの資産を預けること自体が、普通はありえないことだ。日本で起きた事件も、ベンチャー気分の抜けない交換業者のサイバーリスク対策の不備だったが、それと同根の事件である。

暗号資産は非中央集権でブロックチェーンに書かれた情報が取り消せないから、法定通貨よりも安全だ、というのは、セールストークである。実際には、交換業者に資産を預けた時点で、非中央集権ですらなくなっている。そして交換業者の信頼性は、まだまだこれからの問題だ。現実をしっかり認識する必要があるだろう。