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ビットコインの電力消費問題は解決されていない

Mediumというwebサービスを時々閲覧している。仕事に関係ある記事が比較的多く掲載されているからだ。毎日メールで「Medium Daily Digest」というリンク集を送信してくるので、注目記事の題名だけは毎日チェックしている。

そのMedium Daily Digestのメールのタイトル欄には、Today’s highlights のトップの記事が使われる。今日のそれは、「“This Cryptocurrency Miner Says It Solved Bitcoin’s Power Problem” published in Bloomberg」だった。「この暗号資産のマイニング業者は、ビットコインの電力消費問題を解決したと言っている」というブルーンバーグの記事である。

私は、「ほう、ビットコインの電力消費問題が解消されたのか」と興味を持った。そこで記事を眺めてみたら、何だか話が古い。日付を見ると、「Originally published at www.bloomberg.com on November 16, 2017.」と書かれていて、1年半も昔のことだった。どうりで相場や消費電力量のグラフが古いままになっていた訳だ。なんでこんなのが、Today’s highlightsなんだろう。

とはいえ、1年半前にビットコインの電力消費問題が解消されたと発表していたとすれば、それは一応読む価値はあるかもしれない。未だに、ビットコインのマイニングが中規模な国くらいの電力を消費している状況は続いており、それが地球環境問題のマイナス要素となっているのは事実だからだ。

ということで、この1年半前の記事を読み込んでんでみたのだけれど、要は水力発電で得たクリーン電力でマイニングをしましょう、というだけの話だった。そもそもこのプロジェクトはオーストリア発で、オーストリアの電力の過半は水力発電で賄われているのだから、ほとんどがクリーンといえばクリーンだ。とはいえ、太陽光であれ、水力であれ、電力に色はついていないので、「水力発電で得た電力でマイニングすれば問題ない」というものではない。マイニングに浪費してしまった電力は、他の用途にも使えたであろうし、そのプロジェクトを進めるために費やされた様々な資源を考えれば、本来かけなくてよいはずの負荷を地球に掛けているという批判からは逃れられないのだ。

そもそも、ピーク時のマイニングの消費電力は、まさにこのオーストリア一国分の水準だった。個別のプロジェクトの見た目がクリーンであれば良いということではないのだ。世界全体で考えて、ビットコインのマイニングで浪費する電力が爆発的に増加し、持続可能ではなくなることが問題なのである。

このHydroMinerプロジェクトは、この記事が掲載された2017年11月に、H2Oというトークンを発行してICOによる資金調達を行った。tokendata.ioによれば、2.9 百万ドル、約3億円を集めたという。しかし、現在の価格の情報はない。残念ながら、トークンはほぼ無価値になってしまったようだ。一部の取引所で乱高下した価格が表示されているが、そもそも取引がほとんど行われていない。H2Oに続いてH3Oというトークンを発行したらしいが、その実態はよくわからない。

ICO実行当初はメディアやSNSに登場していた女性CEOは、2018年前半以降はネットに姿を見せなくなったようだ。ウェブサイトには、集めた資金で水力発電所を2個賃借し、マイニング事業を行っていると書いてあるけれど、その場所は秘密だという。私には、あまり信憑性が高い主張とは思えない。

たった1年半で、こうも景色が違ってしまうものかと感慨を覚えたが、そういう感想を持たせるためにMediumはこの投稿をToday’s highlightsに選んだのだろうか。これもまた、謎である。