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Facebookは「脅しの手法」を使ったのか

脅しに出たFacebook、我々がやらなければ中国に乗っ取られる(TechCrunch Japan、2019年7月19日 by Josh Constine)

Facebook’s regulation dodge: Let us, or China will
Can it scare its way off the hook?
(TechCrunch, by
Josh Constine)

この記事は興味深いけど、実際にFacebookが「脅しの手法」を使ったということではなくて、Libra公聴会におけるデイビッド・マーカス意見書の中に、If we fail to act, we could soon see a digital currency controlled by others whose values are dramatically different. という文があったことや、昔のザッカーバーグ講演などを引き合いに出して、記事の筆者(Josh Constine)の感想をまとめたものに過ぎない。Facebookがこの手の煽りをやることがない訳ではないが、最近の米国における言論の中で中国脅威論は別に珍しいことじゃないから、この意見書の表現に特別な注意を払う必要はないだろう。仮にもっと露骨に、「Libraを認めないと中国に負けるぞ」と言ったとしても、それが通る訳ではないことは、あの公聴会の雰囲気を見れば分かると思う。

確かに、過去のビットコインのスケーラビリティ問題を巡る中国企業との対立を考えると、「中国人にビットコインやデジタル通貨を乗っ取られてしまう」という危機感を持つ人が出てくるのは理解できる。でも、現実問題として、どこかの中国企業がとても便利な電子決済手段を提供するようになったとしても、それが世界を席巻し、万人がそれを使うようになることは考えにくい。ビットコインのスケーラビリティ問題は、単純に「儲かる」と思う人たちが主導権争いをしたのであって、社会インフラとか決済システムとかが、簡単に外国企業主導のものに切り替わると考える方がおかしい。この辺については、もっと冷静に現実を見ることが必要だ。危機感を煽りすぎるのはどうかと思う。