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カナダのケベック州が暗号資産マイニングのプロジェクトを停止させたとの報道について

Quebec halts cryptocurrency mining projects as it considers restricting operations
by ALLISON LAMPERT
MONTREAL
REUTERS
PUBLISHED JUNE 7, 2018

この記事によれば、カナダのケベック州が、暗号資産のマイニング業者によるマイニング・プロジェクトを停止させたとのことだ。とはいえ、ビットコインのマイニング事業が認可制になったという訳ではない。ケベック州では、州政府が保有するHydro Quebecという企業が州内の63の水力発電所を管理しており、その電力供給をどう割り振るかを決めるプロセスで、新しいマイニング事業を認可するかどうかを判断した、ということのようだ。

マイニング工場は、かつては中国に集中していたが、中国政府のビットコイン禁止政策もあって、世界各国に移動しつつある。ノルウェー、アイスランド、オーストリア、カナダといった国々は、総発電量に占める水力発電の比率が50%を超えており、電力を消費する産業が多いわけでもないから、マイニング産業の誘致に熱心だった。しかし、さすがに最近のマイニングの電力消費量の拡大で、野放図にマイニング産業を操業させると、生活に必要な電力まで足りなくなるのでは、という危機感を持ったようだ。

マイニング装置は24時間稼働させるので、安定的に電力を需要してくれる。電力を高く買ってくれるのであれば、電力会社にとってはありがたい存在だ。しかし、それは個別企業単位で見た場合であって、州とか国とかの単位で考えると、全体として電力が不足するリスクを管理する必要が出てくる。最近のビットコイン価格の高騰により、マイニング事業がまた儲かるようになったが、難易度の上昇により、かつてとは桁違いに大量の電力を消費するようになった。少しばかり電力に余裕がある国であっても、軽々に誘致はできないだろう。

今後、こうした問題は各国で生じるだろう。ビットコインの価格が上昇し、マイニング事業が儲かる限り、業者は工場を建てようとするが、それは巨大な電力を必要とする。化石燃料を使った発電所を一緒に建築する業者も出てくるだろう(太陽光や風力では、夜間や無風時も含めた電力の安定供給ができず、コストも高いため)。地球規模で考えたときに、その環境への負荷はとても大きなものとなる。取り返しがつかなくなる前に、事態の進行にブレーキを掛けることが必要だろう。