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金融審議会・決済法制及び金融サービス仲介法制に関するWG議事録(2019.10.4)

10月4日に開催された金融審議会・決済法制及び金融サービス仲介法制に関するWG(第1回)の議事録が公開されました。以下に、私の発言部分を転載します。

【岩下委員】 どうもありがとうございます。ただいま小木曽メンバー、及び萩原メンバーという、お二人の新しく入られたメンバーからのご意見をお伺いいたしました。これまでの金融制度スタディ・グループは、いわゆる有識者委員から構成され、業界であるとか、あるいはIT産業のような立場を代言する方はメンバーには入っておられませんでしたので、比較的淡々に議論が進んでいたのに比べますと、これからの議論がとても楽しみになるやりとりだったと思っております。

その上で、私もこの分野については長らく考えてきたことがございますので、若干なりとも考えを述べさせていただきたいと思います。どちらかの業界の立場に立つということではありません。歴史的に考えますと、そもそも今回、我々がなぜこういう検討をしているのかというと、金融審議会総会で、情報技術革新を踏まえた新しい決済法制の検討をするようにといった諮問をいただいたからです。我々は、そういう意味では当然、情報技術革新が大きく世の中を変えているということを認識して、それを前提に動かなければいけないのだと思っております。

この点で、歴史的に考えますと、多分、今日議論されているものの一番最初のビジネスモデルをつくったのは、1998年にアメリカで設立されたPayPalであると思います。1998年にピーター・ティールやイーロン・マスクなどが設立したPayPalは、それまでの銀行とは異なり、銀行免許を持たない――後にルクセンブルクでたしか銀行免許を取ったという話があったと思いますが――非銀行業として、まさに今日議論になっているようなC to CあるいはC to Bの取引に取り組んだわけであります。そのビジネスモデルが、例えば現在の何とかペイであるとか、割り勘システムであるとかというものに受け継がれているというふうに認識しております。

それらのものがもらしたイノベーションというのは非常に大きいものだと私は思っておりまして、PayPalがその後、例えばPayPalマフィアを通じてユーチューブをつくり、フェイスブックをつくり、LinkedInをつくりというふうな形のイノベーションを起こしたのと同様に、PayPalそのもののビジネスモデルが、その後のインターネットを利用した金融という新しいカテゴリーを切り開いたんだと、これが1998年の創業であったということは我々が非常に認識すべきことだと思います。

その上で、日本の資金決済法はどうであったかと考えると、これは日本の銀行業が、それまでの様々な技術蓄積から、銀行業としてのイノベーションは大変立派にやってきたんだと思います。例えば米国では、日本の全銀システムに当たるものは存在しません。異なる銀行間での資金決済をするのは大変です。これに対して日本では、1968年という非常に早い時期に地方銀行データ通信システムという、現在の全銀ネットの前身がスタートしました。世界でも初めてのネーションワイドな資金決済システムができ、我々が現在では当たり前と考えている銀行間の送金、銀行の口座というものをベースに全ての人が金融包摂されるという仕組みが、もう非常に早い時期にできていたのだと思います。

それは日本の銀行がこれまで成し遂げてきた大変立派な成果であり、それが現在の人々の利益であるとか、何をやるときにも、例えばまさに何とかペイを使うときでも銀行口座というのを何となく前提として我々は考えています。まさに、例えばこの資料3の3ページにあるように、資金移動業者のアカウントは、途中では仲介するものの、結局、両端には銀行口座があるわけですので、銀行口座というものが人々の資金の本来あるべき姿であって、その途中に立っているこのアカウントというものは、本来のものではないのだと、一時的な姿である、仮の姿であるというふうに何となく考えられているように思います。

このモデルを多分最初につくったのはピーター・ティールたちだと思いますが、そのピーター・ティールが1998年にPayPalを立ち上げた直後に、PayPalの社員に語ったという言葉が記録として残っておりまして、我々はウォール街の銀行たちに支配されている金融というものを民主化するのである、それが我々の使命であるというふうなことを彼は申し述べたということが伝わっています。PayPalをしてインターネットを使って銀行業を再発明した企業というふうに言われているのは、そのためであると考えています。

このインターネットの上に置かれたアカウントという新しい概念の中で、価値のやりとりが行われるようになったことには色々と議論があります。PayPalができてから、あるいは日本でも資金決済法ができて、資金移動業者が同じようなアカウントを提供するようになってから、これは銀行が提供する預金口座と何が違うのかと、これはそもそも銀行業そのものではないのかと、今、萩原メンバーがご指摘になったような意見というのは当時から非常に強くあったと認識しております。

ではなぜ日本では資金決済法が2009年に制定されたのかと言えば、その1968年に起源を持つ全銀ネットというものが大変確実で安全で、事故もなく利用されてきたという意味で非常にすばらしかったわけですが、ただ一方で、これが、例えば一般の個人が店頭で利用するというのは、米国をはじめ海外ではクレジットカードよりもデビットカードのほうがやや多目に使われているというのはよく知られていることでありまして、例えばスウェーデンではほとんどキャッシュレス化されておりますが、これはSwishと言われる一種のデビットカードが銀行業界によって提供されているわけですが、こういったイノベーションは、残念ながら日本の銀行業界からは起きませんでした。J-Debitというトライがあったわけですが、それは残念ながら失敗してしまったわけです。

そのイノベーションを何とか起こさなければいけないのではないかという問題意識が2009年の資金決済法の制定につながったのだというふうに考えれば、当然、資金決済法の求めている仕組みのもとでの新しい決済業というのは、銀行業と全く同じものではある必要はないのだろうと思います。その意味では、もともと現在もそうですし、例えばトランスファーワイズは第1類型に相当すると考えられていると思いますが、既にトランスファーワイズ・ジャパンは昨年から活動しており、一応資金移動業の類型に入りつつ、上限100万円を守りつつ、国際送金に実際取り組んでいます。その意味では、そうしたビジネスがこれからより拡大し、その上限枠が取り払われる、あるいはさまざまな何とかペイの世界で競争が行われて、それが個人のメリットになるということを多分想定しているものだと思います。

すみません、私も長くなってしまいましたが、その意味では、そういう変化のもとで我々がこの金融審議会総会での諮問に答えるとすると、多分それは必ずしも現在の銀行業のコピーとして資金決済業を新たに設けて、それに同じような、全く同じ規制を適用するということは多分ないのだろうと思います。一方で、萩原委員のおっしゃった、同じリスクには同じルールをという基本的な考え方は維持するべきであるとすると、ではどうやってこのリスクとルールのあるべき姿へのアクセントをつけていくかというのが非常に大きな問題なのであろうと思います。

若干個別の論点について言及させてください。保全についてですが、この保全の法律論自体については多分これからいろいろ議論があるんだろうと思いますが、私自身が直接資料を見て感じたのは、1週間単位で計算し、その1週間の間のピークだけ次の1週間に保全するとか、現代の情報技術を前提とすると、そういう議論をしていていいんだろうかということなんです。現代の情報技術を利用すれば、リアルタイムで保全をすることは、技術的には当然可能であります。それは当然必要なコストがかかるわけでありまして、規制の強化になるということは多分、小木曽委員も気にされていることだと思いますが、一方で、その技術的にできることを、規制上不要とされているからほんとうに1週間の上限額で保全をする、でいいのだろうか。利用者に対して安心を与えるということが本来の業者に求められていることだとすると、こんな風にリアルタイムで保全をしているんだから大丈夫ですよということをアピールするべきなのではないかと思います。

あるいは、萩原委員のおっしゃったように、そもそも銀行と同じように完全、金融当局によるレギュレーションというか検査をがっちり受けて、モニタリングを日常的に受けるべきではないかという話もあるかと思います。ただ、そうなるとこれはほんとうに銀行と何が違うのかということになってしまいます。だから、ここは保全を利用するとしても、一種レガシーとして残ってしまった1週間単位を前提として議論するというのは、何となく私は違和感があります。スタディ・グループの席でも、現在のままでは保全が不足するケースが多々あるということが指摘されていたと思います。規制強化にできるだけならないように、かつ技術の革新を前提とした保全を検討するべきです。その場合、どこまで業者が自由に努力できるのか、それをきちんと実効性があるようにモニタリングできるのか、モニタリングの担い手は、自主的な監査によるものなのか当局によるものなのか、報告の機会はどうするのか、というさまざまなオプションを考えるべきです。いずれにせよ、現在の、何とも古くさい、紙とはんこでやっていた時代の仕組みをそのままルールに入れるのは、私はいかがなものかというふうに感じる次第であります。

それから、第1類型、第2類型の議論について言うと、既にさまざまな議論、先ほど指摘があったところですが、私が1つだけここで申し上げたいのは、セブンペイ事件であります。セブンペイ事件というのは、皆さんご存じのとおり7月1日に始まったセブンペイが、7月1日の夜からもう既に、すぐに攻撃を受けてしまい、3,000万円程度と言われていますが被害が出て、すぐにチャージが禁止となり、チャージの受入れをやめて、結果としてチャージができない、クレジットカードのリンクもできないという状態で、事実上サービスがとまったまま9月末にはサービスを停止し、10月1日からはリファンドをするという話になったわけであります。7月12日には、資金決済法に基づいてセブンペイに対して報告命令が出されたという報道がなされたところでありました。

その意味では、セブンペイ事件というものは、まさにそういうことが起こらないようにするというのが、このルールのつくり方の1つの重要なポイントだと思うんですが、私は10月1日から始まったセブンペイのリファンドというのを実際にやってみました。私自身は、できるだけ早い時期から、つまりセブンペイによって禁止されたのはたしか7月の非常に早い時期だったと思いますが、それ以前に多目の金額をセブンペイにチャージしておりまして、時々使っていましたけれども、それがずっと、9月30日の最後まで使った、一番最後まで使っていた人間の1人だと思いますが、それで残った8,000円ぐらいを10月に入ってからリファンドしたんです。

およそ考えられないぐらい複雑な仕組みでした。私も相当苦労しましたので、あれでリファンドできる人が一体どれだけいるだろうかという感じを受けたわけであります。もし1円でも残高が残っていらっしゃる方は実際にやってみるといいと思います。ここまでやるかという感じの、ものすごいセキュリティー対策を講じて、何回も何回も2要素認証でチェックしながら、これでもかというまでやって、その上で、最後に人手でチェックしますから11月まで待ってくださいというのが出てくるということで、私もびっくりしました。ただ多分、保全をして、当事者がもし仮に例えば破綻してしまってリファンドするという話になると、多分これに近い事態になるように思います。

そうするとやはり、これは萩原委員がおっしゃるとおり、こういうサービスをやるからには、実際にそういう問題に直面してしまうと非常に消費者は苦労をします。否が応でも、リファンド1つするにも、セブン-イレブンの店舗に行って、残っている8,000円を換金してくださいと、チャリンと現金をもらうわけにいかないんですよね。そうだとすると、それはそういうことにならないように十分なチェックをすることは非常に大事になってしまうかなというのが、今回の事件で私は非常に強く感じたところでございました。

これからの建設的議論を期待してコメントさせていただきました。どうもありがとうございました。