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公開されたPDFファイルのプロパティを見てみると

世界経済はこれから大変だし、各国ともコロナを完全に封じ込めたとも言えない訳で、せめて米中両国には仲良くしていて欲しいと思う。無駄に対立を煽っても、両国にとって何もいいことはないと思うからだ。

そういう視点からいうと、この記事にはちょっと残念なことが書いてある。シカゴの中国総領事がウィスコンシン州議会議長に中国のコロナ対策を称賛する決議文が付いた、妙な電子メールを送ったというのである。

[FT]自滅した中国コロナ外交
ジャミル・アンデリーニ FT FT commentators
(日経電子版、2020/4/24 0:00)

この記事は、FTに4月19日に掲載されたものが翻訳されたものだ。筆者は、Jamil Andelini。FTのアジア地域の支局を統括するアジア・エディターだという。こういう記事を見ると、つい原文がどんなだか読みたくなってしまう。FTを筆者名で検索すると、すぐにこの記事が出てきた。

なるほど、記事の中に訳されていた「親愛なる総領事殿、ふざけるな」って、 ‘dear consul general, NUTS’. という表現だったのか。なんとこの原文記事には、その送られてきたという決議文案のPDFファイルへのリンクがある。ここだ。

このアドレスはフランス・パリの企業所有になっているけど、ダウンロードしたファイルには、確かに記事にあった決議文案が書かれていた。こういう時は、ファイルのプロパティを見てみよう。そこには、作成者として、Bill Osmulski の名前がある。

そこで、このBill Osmulskiって誰だ、と検索してみると、何故か、RightWisconsinといういかにもの名前の保守系のウェブメディアが見つかる。このメディアの記者の名前らしい。

記事が本当なら、この決議文案は中国総領事が作成して州議会議長に送ったものということになるが、途中で別の記者が介在しているらしい。それにしても、PDFのプロパティなんて簡単に変えられるのに、公開するPDFに記事にも出てこない仲介者の名前が書いてあるのは不思議に思う。

こうなると、そもそも本当に中国総領事がメールを送ったのか、という話になる。それもあるかもしれないが、総領事になりすました別人が送ったかもしれない。総領事に裏はとったのだろうか、証明するのは難しいのでは、などが気になってくる。

多分、様々な勢力による情報戦が繰り広げられているのだろうと思うので、この記事の真贋については保留にしたい。教訓として、PDFファイルを公開するときには、余計な情報は削除したほうがいいな、と思った。