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日銀マンのIT企業見聞録7 CSRの意義

日銀から日立に出向して大きく意識が変わったことの一つが、企業の社会的責任(CSR)の受け止め方である。公的機関である日銀では、CSRという言葉を意識する機会は少ない。企業市民として地域の清掃活動や「花いっぱい運動」に参加することはあったが、社会のため、地域のためというのも照れくさくて、さほど積極的ではなかったと思う。

これに対し、日立のCSRは多種多様で大規模だ。震災復興のみならず、社会のため、地域のために役に立つことをしよう、という意識は筋金入りである。社内のCSRイベントに参加して印象に残ったのは、若い女性社員が発した「社会貢献というのは全然特別なことではないのだから、それを恥ずかしがる必要などない」という言葉だった。

日立が誇ってよいと思うのは、歴代のトップが私費を投じて社会事業を支援するさまざまな組織を立ち上げてきた伝統である。科学技術の振興のため、青少年の健全育成のため、日本国内でも海外でも、企業市民としての貢献を継続してきた。

そうしたCSRの一つに、日本に留学する学生の支援がある。「日立国際奨学財団」は、東南アジアの大学から毎年6-7人の若手教員を留学生として日本の大学院に招聘している。学費と滞在費を負担し、博士号取得を支援するプログラムだ。

社内イントラネットのお知らせに、そうした留学生のホストファミリー募集があったので、それに応募することにした。3年半の間、週末中心に、日常生活面での交流を通して、相互理解と国際親善を深めるための交流ボランティアである。

わが家にやってきたのは、インドネシアで大学の講師を務めていた留学生だ。とてもまじめな若者で、科学技術とアジアの未来について熱く語ってくれる。妻はインドネシア語の挨拶を練習し、彼に日本語を一語ずつ教え込もうとしている。大学生と高校生の息子を加えて、隔週土曜日開催の、にわか国際交流サークルがわが家に誕生した。彼が参加できる日本的な行事は何か、家族で知恵を絞って考えるのも楽しい。

先日、その留学生を東京ディズニーランドに連れていったときのことだ。彼は宗教上の理由で肉が食べられない。バイキングのレストランに入って事情を説明すると、係員がシェフと相談して、食べても問題ない料理の一覧表をつくってくれた。彼が定時に礼拝するための場所を借りたいとお願いすると、りっぱな応接室を使ってよいという。外国人を迎えるのに慣れている施設ならではだが、日本の優しさをアピールできて、こちらもうれしくなった。

CSRで実際に活動するのは個々の社員である。だれもが社会に貢献したいと思う気持はもっているはずで、それを実現できればとてもうれしい。CSRとは、社員にそのような経験をする機会を与えるものでもあるのだろう。

(週刊金融財政事情2012.4.9号掲載)

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