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金融審議会・決済法制及び金融サービス仲介法制に関するWG議事録(第4回 2019.11.12、第5回 2019.11.26)

金融審議会のWGの議事録が公表されました。2回分がいっぺんに公表されたのですが、いつものように、自分が発言したところのみ、切り出して掲載しておきます。

第4回 議事録

【岩下委員】
どうもありがとうございます。これまで各委員のお話をお聞きしておりまして、私の考えが十分に整理されてきた部分もありますし、これについてはちょっと違うかなと思う部分もあります。

最初に私が思いましたのは、そもそも、なぜこういう議論を我々はしているんだろうかという。またまた、そもそも論をしてしまうんですけれども。というのは、これ海外では多分、こういう議論しないと思うんですよ。どうしてかというと、銀行がクレジットカードを出しているからですね。銀行業とクレジットカード産業が別の産業であるというのは、世界広しといえども多分、日本だけです。韓国は、それに近いかな。

このサービスは銀行業である、これは資金移動業である、これは割販法に定める割賦販売事業者であるけれども、これは二月以内だから規制の対象はどこもかからないのであるみたいな、そういう不思議な体系になっているのは、およそ日本だけであるということを、まず我々は認識するべきだと思うんですね。

その上で、今回は、せっかく決済法制を何がしかの意味で考えていこうという話なわけですから、その決済というものというのは、もちろん銀行がとり行う決済のほかに、さまざまなイノベーションによって新しいものができてきたわけですので、そのイノベーションを積極的に取り入れつつも、全体として、ある程度整合的なものにしなくちゃいけない。ところが、あるものはこの法律で、あるものはこの法律で、その法律の細目を見るとこういうルールになっている、別はこのルールになっている、こことここは違う、だから合わせていこう、でもここはという部分を延々繰り返していくというのは、あまり生産的ではないように思うんですね。

本来あるべき姿を考えれば、海外と同じように銀行が本体でクレジットカードを発行するなり、あるいはその他、さまざまな決済の業務を行うものを、ある程度統一的な法制で規定、規制するというほうが、ある意味自然です。欧州の決済サービス指令(PSD2)の中で、これはプリペイドで、これはポストペイだから違うディレクティブを使いますという話は聞いたことがないですから。

そういう意味では、我々は既存の法律面のレガシー、制度面のレガシーを引きずって、いろんな検討をしなくちゃいけなくなっています。それは、法律の生産性でもそうですし、各事業者さんの生産性という意味も大変困ったことが起こっています。

もう一つ、先ほど小木曽委員から、イノベーションによって利用者の利便性はむしろ高まる面があるというご指摘があり、それには賛成なんですが、多分、イノベーションは確実に利用者の理解度には大きなダメージを与えているように思うんですね。さまざまな新しい決済手段が提供されるようになり、既存のさまざまな法律の制度を組み合わせて使うようになった結果、一体これは、自分は何をしているんだろうかということが、個々の消費者に果たしてわかるでしょうか。

セブンペイで支払いを行ったときに、実は裏でチャージが行われて、そのチャージは、実は割賦販売法のルールに基づくんだけど、でも実際にはマンスリークリアだったりなんかすると、それは規制対象じゃありませんみたいな話になると、消費者は何によって保護されているのかというのはわからないと思うんですね。

そこは消費者に対して丁寧な説明をといっても、これもまた、個々の法律に基づいて丁寧に丁寧に説明すればするほど、消費者はますますわからなくなるので、ここは何かいろんな意味で、対消費者へのわかりやすさという意味でも、この制度の仕組みという意味でも、いろんな工夫が要る世界だなと思います。

その上で、とりわけ、本日の各テーマのうちの最初の無権限取引ですが、この無権限取引について、我々がやっぱり思い起こさなくちゃいけないのは、2003年から2004年にかけて起こった銀行の磁気ストライプカードに対する偽造カード事件であります。あのときの被害額は、今から考えれば、たかだかと言うと怒られてしまいますが、数億円。最初、たしか2003年は3億円とか4億円の被害だったと思います。2004年が10億円に達したんだと思いますが。

例えば今年と去年、クレジットカードの不正利用によって発生している無権限取引は100億円を超えていると言われています。その意味では、それと比べて、相対的に小さかった被害に対して、非常に大きな社会的反響があり、最終的には偽造カード預貯金者保護法という法律が成立して、ありとあらゆる責任は銀行にあるのだと、そういう形の内容の法律ができてしまったわけですね。最近は幸いなことに、あまり偽造キャッシュカードの犯罪はないようですが、仮にそういう犯罪が発生すれば、銀行は全ての責任を負う形になっているわけです。

そう考えると、今回、例えば何とかペイ事件、次に何とかペイ事件みたいのがいろいろ起こりましたけれども、でも、そういうものがもっと続いていったら、これは同じような議論になりかねないんじゃないか。その意味で我々は、この無権限取引について、もうちょっと、それをほんとうに防ぐためにはどうすればいいかということを真剣に考えるべきだと考えます。

その意味で、これまでの制度に基づいた、このルールがこうです、ああですという話を多分している余裕はあまりないと思います。かといって、統一的かつ網羅的なルールを策定することは、それは無理なんですね、現時点ではもう業種が違いますから。無理なんですが、何らかの形で統一的、網羅的にチェックをする仕組み、誰かがこれを見ている仕組み、これは多分必要で、こんな被害が起こっていますよ、だから皆さん気をつけましょうということを、これは各業界でばらばらにではなくて、およそ決済にかかわるもの全体として、これをやっていく仕組みが必要なのではないかということを、非常に強く感じた次第であります。

もう一つは、本日の最後の議論のところにある、果たして資金移動業の中での所要自己資本や、あるいは預金保険云々という話がありますが、これについては当然、最初の回に、銀行業のコピーとして決済業つくる必要はないということを申し上げたわけですけれども、先ほど萩原委員からペイロールカードはどうなんだという話があったわけです。

ペイロールカードの問題は、これ僕は非常に深刻な問題だと思うのは、確かにペイロールカードというのは、基本的に資金移動のためだと私は思っています。その後、大体すぐにATMで引き出しちゃいますからね。ただ、そこに一旦ためられるかもしれない。それはそのとおりなんですよ。ただ問題は、なぜそういうことしなくちゃいけないのか。

銀行が普通に、訪日した外国人に対して預金口座を提供できれば、こんな議論にはならなかったはずだし、厚生労働省だって、ペイロールカードを認めましょうなんて議論しなくて済んだはずですよね。現金あるいはそれに準ずるものでしか、労働基準法は給与の支払いを認めていないわけですから。それは非常にクリアな論理なのに、でも、それができないのはなぜかというと、まさに外国人に対して給与を支払えないから困ってしまって、ペイロールカードという話になっているわけなので。

そこを何がしかの形で抑制するという形になると、結果として、それ、じゃあ外国人に対しては現金で払うしかないんですかという話になる。それはお互いに大変効率が悪いので、それは何とかしたほうがいい。そういう部分についてもきちんと、どういう目的のためにそれをやっていて、それは、そのために何が、新しい技術なり制度なりが使えるのかということを考えた上で対応したほうがいいのかなと思った次第です。

第5回 議事録

【岩下委員】
どうもありがとうございます。本日の前半の議論を、特に業界委員の方々の議論を聞いておりまして、1993年に実施されました金融制度改革法をめぐる議論を思い出しました。当時は金融制度調査会と証券取引審議会という2つの審議会の中で、4年ぐらい延々とその議論をやっていた覚えがあります。その結果、子会社方式による相互参入が行われたわけです。大変厳しいファイヤーウォール規制が導入され、役員は兼業が禁止され、ノーリターンルールが設定されるなど、新規参入企業の行動を制約するさまざまな規制が設けられました。

それから約30年経ちました。当時新設された新規参入の金融機関はいかほど大きくなったでしょうか。いいかほどの存在意義を市場で持っているでしょうか。残念ながら、当時設立された信託銀行子会社や証券子会社が大きく成長して、各市場で大きなプレーヤーとなったという話を寡聞にして存じません。

果たして当時そうなることを狙っていたのかというと、多分そうではなかったと思います。それぞれの業界で相互に参入して、もっと成長させていこう、ただし、お互いの領分に入ってくることについては、今日も何度か議論にありましたが、あまり急にやるのは嫌だ、スピード調整をしてほしい、段階的に進めようということでした。その結果、実に30年経ってもその改革の実は出ていないわけです。

私が今回の議論を聞いていて非常に違和感を持ったのは、各業界委員の方々から見れば、今回つくろうとしている仲介業というのは言ってみれば自分の所の商品を売ってくれる販売店のはずです。自分の商品を売ってくれる販売店の商売をやりにくくしろと提案する会社があるでしょうか。私はそこを大変不思議に思うんです。むしろ、仲介業には積極的に売ってほしい。そのほうがたくさんの顧客を獲得できるのではないでしょうか。

実際、最近、個別企業の名前を出して恐縮ですが、LINEという日本では最大規模のプラットフォームがございます。このLINEがLINE証券、LINE保険という2つのビジネスを立ち上げました。その結果、今皆様がお使いのLINEのアプリの中には、もう既に証券や保険を取引するための画面が入っています。ところが、残念ながら、巨額の販促費を投じ、無料の保険を提供したにもかかわらず、幾つかの生命保険会社さんや損害保険会社さんがそこに商品を掲示しても、ごく限られた成約件数にとどまったと報じられています。

当然のことながら、我々はこの新規参入する仲介業に、ビジネス的に大いに成功してほしいわけです。その結果、金融というビジネスの裾野を広げてほしい。多分、本当は各金融機関は直接自分で売りたいんだと思います。ただ、伝統的なチャネルは、もう将来性はないということは皆さんある程度合意できている話です。だとすると、今度新しくできたインターネットというチャネル、そこで大勢の人たちが相乗りするプラットフォーマーを利用していくことが必要です。もちろん顧客の同意のもとで、個人情報の利用目的を明示した上でということですけれども、多くの情報を共有することによって、そこのビジネスがより活性化するはずです。既に現時点で、各証券会社さんや保険会社さんは業界内にネット証券、ネット保険、あるいはネット銀行もお持ちで、それぞれ十分にリスク性の高い商品をお売りですよね。むしろ、ネット取引のほうがはるかに消費者トラブルが起こりにくい。直接の対面型の販売でさまざまな問題が起こっていることを我々は最近の報道でよく知っていますが、それと同じことがネット販売では起こっていないことを考えると、むしろネット販売のほうを推奨したほうがいいぐらいです。

ネット販売というのは能動的に取りに来る人しかいませんから、そのために問題が起こりにくい。ちゃんと勉強します。そういう人たちが大いに利用してくれることが望ましいわけです。しかし、例えばキャッシュレス決済がそう急には普及しないように、この分野が放っておいても普及すると思っていたら、私は大間違いだと思います。その意味では、今日議論にあった中で、この発展を止めるような方向の議論はあまりしないで、どうやったらこの分野が発展できるかという議論をしたほうがよいのではないかというのが私の意見です。